経営者のための発信コラム
経営者の発信 完全ガイド|何を書き、どう続け、どう選ばれるか
「発信したほうがいいのは分かっている。でも、何を書けばいいのか分からないし、続かない」。
経営者の方と話していると、ほぼ必ずこの言葉に行き当たります。私は動画制作会社を経営しながら、経営者の発信を仕事として手伝ってきました。ただ、正直に言うと、私自身が長いあいだ「書けない・続かない側」の人間でした。
このガイドは、その私が回り道の末にたどり着いた考え方を、一枚の地図にまとめたものです。発信を「気合いで続けるもの」から「仕組みで積み上がるもの」に変えるための全体像を、始める順序・媒体の選び方・続け方・AIの使いどころまで、順番に見ていきます。それぞれの章には、より詳しく書いた記事へのリンクも置いておきます。
まず、なぜ経営者に発信が要るのか
「あなたに頼みたい理由」を、会う前に配っておく
発信は、集客のためだけのものではありません。もう少し手前に、大事な役割があります。
それは、「あなたに頼みたい理由」を、会う前につくっておくことです。
いい仕事をしていても、それが伝わっていなければ、選ばれる場面で「他と何が違うんですか?」と聞かれます。発信は、その問いへの答えを、あなたがいない場所であらかじめ配っておく行為だと思っています。だから、続けるほど効いてきます。
ポータルサイトや比較サイトでは、伝わらないものがある
たとえばサロンのような店舗サービスを選ぶとき、ポータルサイトを見ても、実際の施術者がどういう人で、どんな想いでサービスをしているのかは、なかなか分かりませんよね。料金と場所とメニューは並んでいるのに、いちばん知りたい「この人に任せて大丈夫か」が載っていない。
その空白を埋められるのが、経営者自身の発信です。人柄や判断の基準は、本人の言葉でしか伝わらない。ここは代わりが効かない部分だと感じています。
【実例】月4本のブログを約2年続けた会社に起きたこと
「発信は積み上がる」と言葉で言っても伝わりにくいので、実際の数字をひとつ紹介させてください。私の会社で発信を支援している、BtoBのメーカーさんの例です。
やっていることはシンプルで、ホームページのブログ記事を月4本、約2年書き続けている。それだけです。
Googleの検索データ(サーチコンソールという検索の管理画面)で遡れる直近16ヶ月の数字が、こうなりました。
16ヶ月で約166万回
約4.7万人
5.6位
大事なのは合計値よりも、グラフの形です。最初の数ヶ月はほぼ横ばいで、途中から右肩上がりになり、ある時期に一段跳ねて、高い水準で安定する。書いた記事が消えずに残って、あとから来た記事と一緒に検索に引っかかり続けるからです。
しかも、この伸びは今も続いていて、直近3ヶ月だけ見ると月あたり約3,700人が検索からサイトに来ています。月4本の記事で、毎月数千人が「向こうから探しに来てくれる」状態です。広告のように、お金を止めたらゼロに戻る流入とは性質が違います。
私はこれを、積立の複利に近い構造だと思っています。1本ごとの成果は小さくても、記事は「点」ではなく「資産」として積み上がる。逆に言うと、最初の数ヶ月で「効果がない」とやめてしまうのが、いちばんもったいない失敗です。
もうひとつ付け加えると、この会社の記事は商品の宣伝をほとんど書いていません。取引先の現場で実際に困っていることに答える記事(その業界の人が検索している悩み)を書き続けて、その受け皿として自社サービスの紹介ページを置いているだけです。「書きたいこと」ではなく「読者が検索していること」から書く。これも約2年やってみて確信した、大事な順番です。
発信の始め方——5つの順序
では、何から始めればいいのか。私の持論は「道具(媒体)から入ると続かない。背骨が先」です。順序にすると5つのステップになります。
ステップ1:自分の「独自の価値」を言葉にする
いちばん難しくて、いちばん大事な工程です。あなたの中には、判断の基準や、こだわりの理由や、失敗から学んだことが確かにある。それがまだ言葉になっていないだけです。
自分のことは、自分がいちばん見えません。ここは「なぜ?」を何度も重ねて掘る作業で、人に問われながらやると進みやすい領域です。この背骨ができると、以降のネタ出しが一気に楽になります。
ステップ2:誰に届けるかを決める
全員に届けようとすると、誰にも刺さらない発信になります。おすすめは、業界とエリアで絞ることです。
「まだ発信している人が少ない業界×地域」でセグメントして発信すれば、そこで探している人にとって、あなたはほぼ唯一の「顔が見える選択肢」になります。母数を追うより、自分と合う人と出会える確率を上げる。発信のリターンは、そこから生まれると感じています。
もうひとつ、見落としやすいのが「お客様以外の読者」です。求職者に向けて書くのか、すでにいる社員に向けて書くのかで、同じ素材でも記事の形はまったく変わります。読者を取り違えたまま書くと、採用のつもりが会社紹介になってしまう。
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ステップ3:媒体をひとつ選ぶ
SNS、ブログ、note、動画……全部やる必要はありません。というより、最初から複数はまず続きません。ひとつに絞るのがおすすめです。選び方は次の章で詳しく書きます。
ステップ4:日々の判断をネタとして貯める
「毎日発信するネタなんてない」と感じるかもしれません。でも、経営者の1日は判断の連続です。なぜその値付けにしたのか。なぜその人を採用したのか。なぜ断ったのか。 そのひとつひとつが、そのままネタになります。
ネタ帳を埋めようとするより、話したことを記録して、あとで記事に変えるほうが続きます。ゼロから絞り出すのをやめる、というのが要点です。
ステップ5:仕組みに乗せて、出し続ける
最後に、ネタ出し・言語化・執筆・投稿を毎回ゼロからやらなくて済む流れを作ります。ここまでの4ステップが済んでいれば、仕組み化は難しくありません。逆に、背骨がないまま仕組みだけ作ると、空回りします。
媒体はどれを選ぶ?——動画会社の私が全部やってみた使い分け
私は動画制作会社の経営者として、クライアントのYouTube運用やホームページのブログを仕事で回しつつ、自分自身はnoteを2つの名義で書いています。つまり、主な媒体はひととおり自分の手で運用してきました。その実感ベースでの使い分けです。
ホームページのブログ——検索から来る「積み上がる資産」
先ほどの実例のとおり、効き始めるまでは時間がかかりますが、一度積み上がると、検索から毎月安定して見込み客が来る媒体です。BtoBや、検索して業者を探されるタイプの商売なら、最終的にはここに資産を作るのが本命だと思っています。弱点は、成果が見えるまでの半年前後をどう我慢するかです。
note——人柄と考えが伝わる、いちばん始めやすい場所
私自身が2つの名義で書いてみて感じるのは、noteは書くことへの摩擦がいちばん小さい媒体だということです。デザインを考えなくていいし、検索よりも「フォロー」や「おすすめ」で読まれるので、書いた直後から反応があります。経営者個人の考えや来歴を載せる場所として相性がよく、最初の1本を書く場所としては一番おすすめしやすいです。
2つの名義を分けているのには理由があって、テーマが違う発信を同じ場所に混ぜると、読者がついてこられなくなるからです。仕事の考えを書く場所と、趣味に近いテーマを書く場所は分ける。これも運用してみて分かったことでした。読者は「その人の何を読みに来ているか」がはっきりしているほど、定着してくれます。
動画・YouTube——信頼の濃度は最強、ただし手間も最大
本業なのであえて正直に書きますが、動画は伝わる情報の濃さでは他の媒体の比ではありません。声と表情が乗るので、「この人に任せて大丈夫か」が一発で伝わります。ただし、企画・撮影・編集の手間は文章の比でもありません。文章の発信が回り始めて、「もっと人柄を伝えたい」となった段階で足すのが現実的だと思います。
X(旧Twitter)——正直に言うと、私の主戦場ではありません
Xについて詳しい運用術を語る資格は、私にはありません。自分の主戦場にしてこなかったからです。
ただ、これだけは書いておきたいのですが、経験していない媒体について語らないというのも、発信の信頼を作る大事な姿勢だと思っています。世の中の「全媒体を攻略しよう」という情報に焦る必要はありません。自分が続けられる場所をひとつ選べば十分です。
何を書くか——ネタは探すものではなく「思い出す」もの
媒体を決めたら、次は「何を書くか」。ここで止まる方が一番多いのですが、ネタは外に探しに行くものではなく、すでにあなたの中にあるものを思い出すほうが早いです。
ネタの拾い方(顧客からの質問・日々の判断など4つの source)と、「ネタがない」の正体(ネタではなく、自分に向ける問いが足りない)は、それぞれ1本ずつ詳しく書きました。
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どう続けるか——意志ではなく仕組み
多くの人がつまずくのが継続です。私もそうでした。
大事なのは、続かないのは根性が足りないからではない、という事実です。発信は「今日やらなくても誰にも怒られない」うえに、ネタ出しと執筆を同時にやろうとして脳が疲れる。続かないように出来ている構造の中で、意志だけで戦っているから止まるのです。
「止まる構造」の正体と、仕組みの具体的な組み方(3つの部品)は、それぞれ詳しく書いています。
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AIとどう組むか——「代わりに書く道具」ではなく「引き出す相手」
最近はAIで記事を書く方も増えました。ただ、AIにいきなり「書いて」と頼むと、どこかで読んだような、あなたの言葉になっていない文章が出てきます。
大事なのは順番です。先に、あなたの価値や経験を引き出してから書く。そうすれば、AIを使っても薄くなりません。
実際に、この順番でAIとの対話から記事を作ったリラクゼーションサロン経営の方が、「自分でも気づいていなかった想いや軸を言語化してくれる体験でした」という感想をくださったことがあります。AIは「代わりに考える道具」ではなく、「あなたから引き出す相手」として使うのが、いちばん力を発揮すると感じています。
よくある質問
発信のお手伝いをする中で、実際によくいただく質問をまとめました。
Q. 成果が出るまで、どのくらいかかりますか?
ブログ(検索経由)の場合、先ほどの実例では最初の数ヶ月はほぼ横ばいで、半年を過ぎたあたりから伸びが目に見えてきました。最初の半年は種まきの期間だと思って、成果ではなく「続いているかどうか」だけを見るのがおすすめです。noteやSNSは反応自体はすぐありますが、仕事につながる信頼が育つのは、やはり月単位です。
Q. 何を書けばいいか、本当に分かりません
実は、これが一番多くいただく相談です。そして多くの場合、書くことがないのではなく、自分の中の「当たり前」が自分では見えていないだけです。人に問われると、するすると出てきます。ひとりで難しければ、誰かに「なぜ?」と聞いてもらう場を作ってみてください。
Q. 毎日投稿しないとダメですか?
そんなことはありません。先ほどの実例は月4本です。頻度よりも、止まらないことのほうがずっと大事です。無理のないペースを決めて、それを守るほうが結果につながります。
Q. 発信がずっと苦手でした。それでもできますか?
発信が苦手なのは、能力の問題ではなく手順の問題だと思っています。以前、自然体験のコーチングをされている方で、6年間発信に挑戦しては挫折を繰り返してきたという方がいました。その方も、「問いに答える」ところから始める形に変えたら、「これなら、私にもできる」と言って動き出されました。書けない人は、話せる人です。入り口を変えれば大丈夫です。
Q. 忙しいので、発信を外注してもいいですか?
外注自体は悪くありません。私の会社もその支援を仕事にしています。ただ、丸投げには限界があると、支援する側として正直に思います。あなたの判断の理由や想いは、あなたの中からしか出てこないからです。うまくいくのは「中身(経験と考え)は本人が出し、形にする作業を外に任せる」という分担です。逆に、中身ごと外注すると、誰にでも書ける記事が量産されて、選ばれる理由にはつながりにくくなります。
Q. AIで書いた文章は、薄くならないですか?
いきなり書かせれば、薄くなります。順番が逆だからです。先に自分の経験と考えを引き出して、それを元に書く分には、AIはとても頼れる相棒になります。詳しくはこちらの記事にまとめました。
まとめ——まず、1本から
長く書きましたが、やることはシンプルです。
- 自分の「独自の価値」を言葉にする
- 誰に届けるかを決めて、媒体をひとつ選ぶ
- 日々の判断をネタとしてためて、仕組みに乗せて出し続ける
全部を一気にやる必要はありません。まず1本、自分の言葉で書いてみる。そこから、選ばれる理由は少しずつ育っていきます。
このガイドで書いた「引き出してから書く」という流れは、私自身が作ったツール「Tanemi」の考え方そのものでもあります。もし、ひとりで言葉にするのが難しければ、問いに答えるところから試してみてください。
発信は、続けるほど積み上がる資産です
今日の1本が、半年後のあなたを助けます。
発信、仕組みで続けませんか?
問いに答えるだけで、あなたの経験が記事になり、noteの下書きまで届きます。
まず無料で1本つくるまだ迷う方は、1分の発信タイプ診断からでも。じっくり考えたい方には、無料レポート「なぜ、経営者の発信は続かないのか」(PDF・12ページ)もどうぞ。



