経営者のための発信コラム
「使いにくいところ、言ってください」——お客様を"開発パートナー"にしたら、30分で課題が4つ出た
先日、自分のサービスを使ってくださっているお客様と、30分だけ打ち合わせをしました。
サービスの形がひととおり整ってから、まだ2週間ほど。自分では何度も動かして確認していたので、正直「ちゃんと動いている」つもりでいました。
でもその30分で、商品の根っこに触るような課題が4つ出ました。細かいデザインの粗ではありません。「これは直さないとサービスの約束が守れていない」という類のものばかりです。聞いていて、冷や汗が出ました。
でも、終わってみて思ったのは「本当によかった」でした。この記事では、なぜそんなに課題が出たのか、そして私がそこから学んだ「お客様に役割を渡す」という考え方を書きます。
なぜ、30分で4つも出たのか
理由は、はっきりしています。私が打ち合わせの最初に、こう伝えていたからです。
先に、こう頼んでおいた
「使いやすいように、要望してほしいんです。使ってみて『ここが使いにくい』と思ったところを、そのまま言ってください。」
これを先に言ったかどうかで、出てくるものが変わります。依頼した瞬間、相手の立場が「教えてもらう人」から「一緒に良くする人」に変わるからです。
普通、お客様は遠慮します。使いにくくても「自分の理解が足りないのかな」と飲み込んでしまう。でも「言ってください」と先に頼まれていると、口に出しやすくなる。実際その日は、本人が言葉にしてくれた分と、私が横で見ていて気づいた分の両方が出ました。
いちばん大きかったのは「横で使うところを見た」こと
もう一つ、大きな発見がありました。
その時点で、同じサービスを使ってくださっている方は他にもいました。でも横に座って、その人が実際に操作するところを見たのは、この時が初めてだったんです。
そして分かりました。課題が4つも出たのは、その方が特別に鋭かったからではない。単に、今まで"見る場"がなかっただけだと。
作り手が自分で何度動かしても、それは「作った人の手つき」でしかありません。どこを押せばいいか、最初から知っているからです。初めて触る人がどこで迷うかは、その人が触るところを見ないと、永遠に分からないのだと思います。
「困っていませんか」と聞いても「大丈夫です」と返ってくる。詰まっている瞬間は、横で見ないと見えない
お客様は基本的に気を使ってくれる。「要望してほしい」と先に頼んで、初めて本音が出る
鋭い人を探すのではなく、見る場をつくる。同じ場を持てば、他のお客様からも同じだけ出てくる
だから、その関係に名前をつけた
この打ち合わせのあと、私はひとつ気づきました。あの方がやってくださったことには、ちゃんと名前をつけるべきだ、と。
要望を伝えてくれる。改善に付き合ってくれる。これは「お客様」という言葉だけでは足りない働きです。感想をくれるだけでもなく、ただ使うだけでもない。一緒にサービスを良くしてくれている。
だから、こう呼ぶことにしました。
開発パートナーという定義
サービスに共感してくれて、要望を伝えてくれて、改善に付き合ってくれる人。ただ使う人ではなく、一緒に作る人。
名前をつけると、こちらの姿勢も変わります。「意見をもらう」ではなく「一緒に作っていただく」。相手に渡しているのは、役割です。
相手にとって、何が嬉しいのか
ここまで書くと、こちらの都合ばかりに聞こえるかもしれません。要望を出してもらう側が得をするのは、当たり前です。では、言ってくださる側には何があるのか。ここを設計しないと、ただ協力をお願いしているだけになってしまいます。
私は、3つあると思っています。
「ここが使いにくい」と言えば、そこが直る。使い続けるほど、自分の仕事に合った形になっていく
普通なら要望は問い合わせ窓口に消えていく。直接つくり手に届いて、すぐ形になる
「自分が言ったから、今この形になっている」。使うだけの人には残らない、関わりの実感が残る
いちばん大きいのは、3つ目だと思っています。人は、自分が関わったものに愛着を持ちます。言った意見が形になる体験は、単に便利になる以上のものを残す。だから開発パートナーは、こちらが一方的に助けてもらう関係ではなく、お互いに得るものがある関係になります。
逆に言えば、この3つを渡せないなら、頼むべきではないとも思います。「意見をください」だけ言って何も変わらないなら、相手の時間を奪っているだけです。
「モニター」ではなく「パートナー」
似た言葉に「モニター」があります。でも私は、この言葉を選びませんでした。
モニターは"試す人"、開発パートナーは"一緒に作る人"だからです。ひと文字の違いのようでいて、相手に渡している役割がまるで違います。試す人は感想を言って終わりますが、一緒に作る人は、その先も付き合ってくれます。
伝え方も決めました。お願いするときは、こう言います。
開発パートナーとして、ご一緒いただけませんか。
使ってみて「ここが使いにくい」と思ったところを、そのまま言ってください。
いただいた声は、必ず直してお返しします。
「何かあったら言ってくださいね」と曖昧に言うのとは、まるで違います。役割を名指しで頼んでいるからです。しかも、こちらから毎回持ちかけられる。特定の誰かの熱意に頼らない、繰り返せる形になりました。
指摘は、その日のうちに直す
もう一つ、大事にしたことがあります。出してもらった4つを、その日のうちに全部直したことです。
これは相手への礼儀でもありますが、それ以上に効きます。指摘が翌日には直っている——この体験があると、次からもっと言ってくれるようになる。逆に、言っても変わらないと分かれば、人は言わなくなります。
要望をもらう仕組みで大事なのは、集め方より返し方なのかもしれません。
まとめ——お客様に、役割を渡してみる
もし今、「お客様の本音が聞けていないな」と感じているなら、試してほしいことがあります。先に「言ってください」と頼むこと。そして、その関係に名前をつけることです。
- 「何かあったら言ってくださいね」→ 社交辞令に聞こえる。相手は遠慮したまま
- 「開発パートナーとして、一緒に良くしてください」→ 役割。頼まれた側も動きやすい
そのうえで、横で使うところを見せてもらう。それだけで、今まで見えなかった課題が出てきます。私の場合は、30分で4つでした。
課題がたくさん見つかった打ち合わせは、へこむ日ではなくて、いちばん価値のある日なんだと思います。
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