採用noteの書き方——求職者に届かない記事に共通する、3つのサイン
先日、自分たちで作っているツールで、ある会社の採用向けの記事を作りました。
素材は申し分ありませんでした。創業者が業界で「レジェンド」と呼ばれた職人だったこと。技術者の数と実績が日本一だと元請けから言われていること。社員の年収を、約束したとおりに上げてきたこと。どれも作り話ではない、その会社にしかない事実です。
できあがった記事を読んで、私は「よく書けているな」と思いました。
そのあと、もう一度読み返して、青ざめました。これは求職者に向けた記事ではない、と気づいたからです。
出てきたのは「うちはすごい」という記事だった
書かれていたのは、こういう内容でした。
会社の技術がいかに希少か。元請けから「あの会社がいないとできない」と言われた実績。創業者の物語。そして最後に「技術的優位性や組織づくりにご関心のある方は、お気軽にご連絡ください」。
全部、事実です。文章としても整っています。
でも、これを読むのは誰でしょうか。同業者か、取引先か、経営者仲間です。少なくとも、転職を考えている人が読んで「ここで働きたい」と思う記事にはなっていませんでした。
自分が求職者だったら、と考えてみると分かります。この記事を読み終えても、自分がそこで何をするのかが、まったく想像できないんです。
原因は文章力ではなく、読者がずれていたこと
なぜこうなったのか。原因ははっきりしていました。
私たちのツールは、その会社の「発信の目的は採用です」という情報を受け取っていました。受け取ってはいたのですが、それが対話の掘り方にしか反映されておらず、記事を書く工程まで届いていなかったのです。結果として、集客用の記事とまったく同じ設計で書かれていました。
これは仕組みの不備でしたが、同時に、人が書くときにも同じことが起きるなと思いました。
集客の記事と採用の記事は、読者が比べているものが違います。
「誰に頼むか」を比べている。効くのは、その人の判断の仕方や考え方
「どこで働くか」を比べている。効くのは、入ったあとの具体
創業の物語は両方に使えるが、着地点がまったく別になる
「採用のために書く」と決めていても、書き慣れた集客の型で書いてしまうと、会社紹介にしかなりません。私たちのツールがやってしまったのは、まさにそれでした。
滑っている採用記事に共通する、3つのサイン
自社の失敗を分解して、判定できる形にしてみました。書いたあとに読み返して、次のどれかに当てはまっていたら、読者がずれている可能性があります。
求職者はまだ会社に興味を持っていません。自慢から始まる文章は、興味を持ってから読むものです
任される仕事、身につく技術、どう教わるのか、何年でどうなるのか。ここが空白の記事は、判断材料になりません
これは営業のCTAです。採用の記事なら、話を聞きに来る・見学する・応募するのどれかに着地するはずです
3つ目は特に多いと思います。会社のブログは基本的に問い合わせを取るために書かれてきたので、締めの一文だけ癖で戻ってしまう。
求職者が知りたいのは、たぶんこの4つ
では何を書けばいいのか。私が整理したのは、この4つでした。
- 何をするのか——職種名ではなく、実際の一日の中身
- どう教わるのか——「背中を見て育てる」なら、それが具体的にどういうことなのか
- 誰と働くのか——上司や先輩が、どんな考え方をする人たちなのか
- 向いていない人は誰か——これが一番むずかしく、一番効きます
技術の希少性や実績は、書いてはいけないわけではありません。ただし、そのまま出すと自慢話になります。「だからあなたは、そこで何を身につけられるのか」に翻訳してから書くと、同じ事実が求職者の判断材料に変わります。
「向いていない人」を書けるかどうかが分かれ目
採用広報の事例をいくつか調べていて、共通して出てくる原則がありました。応募数を増やすことと同じくらい、ミスマッチを減らすことが大事だという考え方です。
採用試験のポイントやFAQを全部公開している会社、評価制度を変えた経緯まで書いている会社、うまくいかなかった組織施策を失敗のまま公開している会社。いずれも「BADもさらけ出すと、かえって信頼される」という結果になっています。
考えてみれば当然で、入社した人は必ず答え合わせをします。盛って集めた人は、盛った分だけ早く辞めます。
だから「うちに向いていないのはこういう人です」と書けるかどうかが、記事の質を分けます。書けない会社は、まだ自分たちのことを言語化できていないのだと思います。
ここで一つだけ注意点があります。性別・年齢・容姿・国籍で人を限定する表現は、書いてはいけません(職業安定法・男女雇用機会均等法)。書くのは働き方や価値観の相性であって、属性ではありません。
何を書くかに困ったら、型は6つあります
毎月書こうとすると、ネタが尽きます。採用広報の事例を整理すると、記事の型はだいたい6つに収まりました。
創業のきっかけ・原体験・向かう先。刺さるのは、失敗や迷いを含んだ一次情報のほう
なぜ入り、いまどうか。経歴の羅列ではなく、固有の場面を書く
選考の流れ、評価の考え方、任せる裁量。「何を見ているか」の開示
一日密着、現場の風景。地味なところも隠さず、時系列で淡々と
変えた制度と、その理由。うまくいかなかった施策の話は特に効く
説明会やインターンのレポート。参加者の生の声を入れる
この6つを順に回していけば、少なくとも半年は書くものに困りません。
直したら、同じ素材から別の記事になった
冒頭の会社の記事は、器を作り直してから書き直しました。
素材は一つも足していません。同じ対話ログ、同じ事実、同じ数字です。それでも、出てきた記事はまったく別のものになりました。
技術の希少性の話は、「この技術は現場に入るしか習得する方法がない。だからここに入って現場を踏むことが、そのまま技術の取得になる」という書き方に変わりました。給与の話は、「幹部が結婚するときに言った一言をきっかけに、会社として実現すると決めた」という判断の物語として置かれました。そして「変わったのはつい最近です。最初から整っていた会社ではありません」と、正直に書かれていました。
読み終えたときに残るものが、「すごい会社だな」から「ここで働くと、こうなるのか」に変わっていました。
素材は、たぶんもう足りている
この一件で私が学んだのは、採用の記事が書けないのは、書くことがないからではないということです。
創業の経緯も、技術の中身も、社員が変わっていった話も、すでにその会社の中にあります。足りていないのは素材ではなく、それを誰に向けて並べ直すかという設計のほうでした。
もし採用のためにnoteやブログを書いていて、手応えがないと感じているなら。文章のうまさを疑う前に、一度「これは誰が読む記事か」から見直してみると、変わるかもしれません。
私たちのツールも、まさにそこを直したところです。
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