「実績を書いても、反応がない」——人が読むのは、うまくいく前の話です 経営者のための発信コラム

「実績を書いても、反応がない」——人が読むのは、うまくいく前の話です

2026-09-16|松井祐太(プロフィール)

新しい取り組みを始めた。売上が伸びた。表彰された。せっかくなので投稿してみたのに、反応はほとんどない。そういう経験、ありませんか。

書き方が悪いのだろうかと、言い回しを直してみる。写真を変えてみる。それでもあまり変わらない。

たぶん、直す場所が書き方ではないんだと思います。

登壇した2人が、そろって「どん底」から話し始めた

先日、私が運営に関わっている経営者の集まりで、二人の経営者が順番に登壇して、自分の歩みを話す会がありました。お二人とも、業種も、歩んできた道も違います。

面白かったのは、どちらも成功の話から入らなかったことです。

ひとりは、30代で仕事を失った話から始めました。何十社受けても通らず、そのとき自信も、仕事も、家庭も、いっぺんに無くしたそうです。もうひとりは、事業が伸びていた途中でコロナを受けて大きな赤字を出し、自分の判断のせいで幹部が何人も辞めていった話でした。そのあと立て直していく過程でも、人を採りすぎて毎月お金が出ていくばかりになった時期があった、と続けていました。

いまはどちらも、事業として成り立っています。だから本来、話せる実績はいくらでもあるはずなんです。それでも先に置いたのは、うまくいく前のほうでした。

そして、講演のあとのパネルで司会がまず投げた質問も、成功の秘訣ではなく「なぜ、逆境を乗り越えられたのか」でした。

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完成品には、人は自分を重ねられない

「こうして成功しました」は、聞いた瞬間に相手にとって他人の話になります。自分を置ける場所が、その話の中に無いからです

実績は「結果」なので、読む人の入り込む隙間がない

実績は、すでに終わった話です。終わった話には、読む人が入り込む隙間がありません。

一方で、うまくいく前の話には、まだ結果が出ていません。どうなるか分からない人が、何かを決めようとしている。読んでいる側は、そこに自分を置けます。

自分の会社に置き換えると、はっきりします。「年商◯億になりました」という投稿を読んでも、たいてい何も起きません。でも「あのとき、社員に頭を下げて方針を変えた」という話には、つい続きを読んでしまう。内容の差ではなく、位置の差です。

同じ出来事でも、結果を書くか、判断を書くかで読まれ方が変わる
同じ出来事でも、結果を書くか、判断を書くかで読まれ方が変わる

だから、反応がないのは発信をサボっているからでも、文章が下手だからでもないことが多いです。単に、いちばん読まれる部分を出していないだけです。

ただし、「失敗談を書け」という話ではありません

ここを取り違えると、しんどい方向に行きます。

うまくいかなかった話を書く、と決めた瞬間に、「どれだけひどかったか」を書きたくなるんです。借金がいくら、何人辞めた、どれだけ眠れなかった。読んだ人は、気の毒だとは思っても、そこから持って帰るものがありません。

読まれているのは、つらさそのものではないと思います。その状況で、何を選んだかです。

先ほどのお二人も、どん底の描写は意外と短いんです。長いのは、そこから何を基準に決めたかのほうでした。何を諦めて、何を諦めなかったか。誰に頼ったか。どこで考え方を変えたか。判断の中身が具体的だから、聞いている側は自分の会社に持ち帰れます。

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書くのは「つらさ」ではなく「判断」

同じ出来事でも、感情を書くと日記になり、選んだ理由を書くと読み物になります。読者が持ち帰れるのは後者だけです

何を書けばいいか分からなくなったときの、3つの問い

過去の話でなくてかまいません。今週のことで大丈夫です。

①今週、決めかねたことは何か

迷ったということは、選択肢が2つ以上あったということです。その2つを並べるだけで、もう読み物になります

②それを、最終的に何で決めたか

数字で決めたのか、相手の顔で決めたのか。その基準が、そのまま会社の価値観です

③やってみて、どうだったか

うまくいっていなくてもかまいません。途中経過のほうが、読む人には近く感じられます

この3つに答えていくと、自慢にならないのに中身のある話が自然にできあがります。実績を書こうとすると自慢になるか、遠慮して薄まるかのどちらかになりがちですが、判断の話はそのどちらにもなりません。

「かっこ悪い話は、お客様に見せたくない」という気持ちについて

これは本当によく聞きます。もっともだとも思います。

ただ、実際に読まれている話を見ていると、信用が落ちているようには見えません。むしろ逆のことが起きています。うまくいかなかった時期を通っている人のほうが、「この人は分かってくれそうだ」と思われている。

理由は単純で、お客様の側も、たいてい今うまくいっていないからです。うまくいっている人は、そもそも誰かを探しません。探しているときに読みたいのは、完成した人の話ではなく、同じところを通った人の話です。

先日の講演も、お二人が最初に出したのは、自分のいちばん見せたくない時期のほうでした。実績はそのあとです。もし順番が逆だったら、たぶん同じようには届いていません。

最後に

もし今、「書くことはあるはずなのに、投稿すると反応がない」と感じているなら、題材を一段だけ手前にずらしてみてください。

達成したことではなく、達成する前に何を決めたか。終わった話ではなく、まだ途中の話。それだけで、読む人の位置が変わります。

そして、これは書く技術の問題ではありません。思い出して、口に出せば、それでいい話です。

うまく文章にならない、という方は、話すだけで言葉になる形もあります。書き方の全体像は経営者の発信 完全ガイドに、何を書くかで止まってしまうときは「うちには書くことがない」と言う会社ほど、書くことがあるもあわせてどうぞ。

松井祐太
松井祐太株式会社Four Aces 代表

映像制作会社を経営しながら、AIで経営者の発信を仕組みにする「Tanemi」をつくっています。たとえばサロンを選ぶとき、どんな人がどんな想いで向き合ってくれるかは、ポータルサイトの条件だけでは伝わりませんよね。発信は、その「あなた」を届ける場所です。だから、お客様には「この人にお願いしたい」と選ばれます。採用も同じで、まだ発信していない人が自分の魅力を言葉にできたら——業界やエリアを越えて、その人に本当に合う仲間や従業員との出会いが増えるはずです。発信を通じて、そんな出会いと、幸せになる人を増やしたい。人生が輝くきっかけを、つくり続けたいと思っています。

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