「腕はいいのに、紹介が来ない」——磨く場所が、違うのかもしれません 経営者のための発信コラム

「腕はいいのに、紹介が来ない」——磨く場所が、違うのかもしれません

2026-08-28|松井祐太(プロフィール)

技術には自信がある。実績も積んできた。それなのに、思うように紹介が来ない。

そう感じている経営者の方は、少なくないと思います。私も長いあいだ、信頼される人というのは大きな成果を出す人だと思っていました。特別な技術があって、実績があって、だから選ばれるのだと。

ただ、ある集まりに7年いて、はっきり分かったことがあります。紹介をもらえるのは、能力がある人ではありません。関係を作れる人です。

これは能力を軽んじる話ではありません。むしろ逆で、能力が正しく評価されないまま埋もれてしまう、という話です。

紹介する側は、あなたの腕を評価できない

少し、自分が誰かを紹介するときのことを思い出してみてください。

私も「腕がいい人ですよ」とは言います。言うのですが、一緒に仕事をした相手ならともかく、全員の腕を確かめたわけではありません。

では、何を見てそう言っているのか。振り返ると、口から出ているのはこういう言葉でした。

1
「すごく丁寧な人です」

仕事の中身ではなく、関わり方を見ている

2
「連絡が早いですよ」

約束したことが、実際に返ってきた記憶

3
「安心して任せられます」

自分が困らなかった、という体験

気づけば、専門の中身の話が一つも入っていません。私たちは関係のほうを見て、腕のほうを想像しているのだと思います。

相手を軽んじているのではありません。他の領域の専門性を正確に測る手立てが、そもそも無いだけです。

縦軸と横軸、そして面積

この構造を、2つの軸で整理してみます。

縦だけ伸ばしても、横がゼロなら面積はゼロのまま
縦だけ伸ばしても、横がゼロなら面積はゼロのまま

縦軸が、専門の力。横軸が、関係を作る力です。

私たちは普段、縦を伸ばそうとします。技術を磨いて、資格を取って、実績を積む。当然です。事業をやっている以上、そこが商品ですから。

でも、自分が実際に世の中に出せる影響力は、この2つの掛け算——面積のほうだと思います。そしてその面積が、そのままいただける売上になっていきます。

そう考えると、少し怖いことが見えてきます。どれだけ縦を伸ばしても、横がゼロなら、面積はゼロのままだということです。

しかも、縦と横には決定的な違いがもう一つあります。

縦は人に頼める。頼めないのは、横だけ

縦軸は、自分ひとりで抱える必要がありません。

自分にできないことは、できる人に頼めばいい。私自身、動画も設計も、社内外の人に助けられて成り立っています。足りない専門は、まわりの誰かに埋めてもらえます。

埋めてもらえないのは、横軸だけです。「言ったことをやる人かどうか」を、誰かに代わってもらうことはできません。

では、その横軸は何でできているのか。大きなことではないと思っています。

横軸の正体は、小さな約束

「あとで連絡します」と言ったら、本当に連絡する。「資料を送ります」と言ったら、その日のうちに送る。「一度紹介します」と言ったら、忘れずにつなぐ。

一つひとつは、大したことではありません。でも受け取った側には「この人は、言ったことをやる人だ」という印象が残ります。それが関係というものの中身なのだと思います。

逆に、小さな約束ほど軽くなりがちです。そのままになっても、誰も怒りませんし、指摘もされません。信頼が減るときは、静かなのだと思います。気づいたときには、紹介が来なくなっている。

ここまでは、会って作る関係の話です。ただ、この方法には一つだけ限界があります。

会って作れる横軸には、上限がある

リアルで伸ばせる横軸は、時間で頭打ちになります。

会って話す、食事に行く、1対1で向き合う。どれも横軸を伸ばす行為ですが、月に何回入るかで限界が決まってしまいます。1日は24時間しかありませんから、面積の横幅は、そのままカレンダーの空きに縛られます。

紹介が増えない理由が「まだ知り合いが少ないから」だとすれば、解決策は会う回数を増やすことになります。でも、その回数はもう限界に近いのではないでしょうか。

そこを外す手段が、発信なのだと思います。会っていない時間にも、自分がどう仕事をしているかを見せられる。一度お会いした方の記憶の中に、残り続けられる。

発信で見せるべきは、腕ではありません

ここで、一つだけ注意したいことがあります。

多くの方は、発信でも縦軸を見せようとします。技術のこだわり、実績、専門知識。気持ちはよく分かります。私もそうでした。

でも、さきほどの話がそのまま当てはまります。読んでいる側は、あなたの腕を評価できません。伝わるのは、やはり横軸のほうです。どんな人と、どう関わっているか。言ったことをやっているか。困っている人に何を渡したか。

先日、こんなことがありました。ある会社の社長が、私たちのサービスをご自身のSNSで紹介してくださったんです。お金は一切お支払いしていません。理由は、使ってよかったから。そしてその投稿を見た方が、その日の夜のうちに実際に試してくださって、さらに次の方へと広がっていきました。

会って積み上げた横軸が、オンラインで面積に変わった瞬間だったと思います。あの連鎖は、私が自分の腕を語ったから起きたものではありません。

もし今、紹介が来ていないなら

原因は、腕の不足ではないかもしれません。

縦を伸ばす努力は、たぶんもう十分にされていると思います。足りないのは、その縦を面積に変える横のほうかもしれない。そして横は、大きな行動ではなく、口にした小さな約束を守り切ることと、それを見える場所に置いておくことから始まります。

発信は、宣伝のためのものだと思われがちです。でも本当は、会えない時間にも横軸を伸ばし続けるための道具なのだと思います。

今日ひとつだけ試すとしたら、最近そのままになっている小さな約束を、1つ片付けてみてください。そしてもう1つ。その仕事の中で自分が何を考えていたかを、短くていいので書いてみる。

その積み重ねが「この人になら任せられる」に変わっていくのだと、私は思っています。

松井祐太
松井祐太株式会社Four Aces 代表

映像制作会社を経営しながら、AIで経営者の発信を仕組みにする「Tanemi」をつくっています。たとえばサロンを選ぶとき、どんな人がどんな想いで向き合ってくれるかは、ポータルサイトの条件だけでは伝わりませんよね。発信は、その「あなた」を届ける場所です。だから、お客様には「この人にお願いしたい」と選ばれます。採用も同じで、まだ発信していない人が自分の魅力を言葉にできたら——業界やエリアを越えて、その人に本当に合う仲間や従業員との出会いが増えるはずです。発信を通じて、そんな出会いと、幸せになる人を増やしたい。人生が輝くきっかけを、つくり続けたいと思っています。

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