経営者のための発信コラム
「顔は広いほうだと思います」——それでも、相談が来ない理由
人にはよく会っている。交流会にも顔を出しているし、紹介で人を紹介することもある。名刺の数も増えてきた。
それなのに、「まず相談したいんですが」という話が来ない。仕事の話が出ても、条件と値段の比較になる。丸ごと任せてもらう仕事、長く付き合う仕事だけが、どうも自社には回ってこない。
会う数が足りないのだろうか、と考えてしまいます。ただ、たぶん原因はそこではありません。
会った日が、いちばん覚えられている日です
私は経営者の集まりに7年いますが、そこで嫌でも分かったことがあります。
会って、名刺を交換して、1対1で1時間ほど話して、ありがとうございましたと別れる。とても良い時間になることも多いです。ところが、そこで終わると数日でほとんど忘れられます。
相手が薄情なのではありません。そのあと接点が無いからです。人は毎日たくさんの人に会っていて、その中で会った日が最大値になり、翌日から薄れていきます。こちらが相手を忘れるのと、まったく同じ速さでです。
だから、会う数を増やしても追いつきません。増やすほど、薄れていく相手も増えるからです。
知らない人の発信には、連絡しません
では発信すればいいのか、というと、片側だけでもうまくいきません。
SNSでもブログでも、知らない人の投稿を見て「いい話だな」と思うことはあります。参考にもなる。保存もする。でも、その人に連絡はしません。知らないからです。連絡する理由がありません。
会っただけでは忘れられ、発信だけでは動かない。ここが、発信していても手応えが無いときの正体だと思っています。
ところが、この2つが揃うと反応が変わります。一度会った人が発信を続けていると、「そういえば、あの人がこんなことを言っていたな」という瞬間が来ます。気になったことがあればコメントもしますし、質問もします。会ったことがあるので、連絡する理由があるからです。
足し算ではなく、掛け算です。どちらかがゼロだと、全体がゼロのままになります。
売り込みではありません。「まだやっています」「今はこういうことを考えています」が届き続けている状態のことです
なぜ「大きい相談」ほど、名前で決まるのか
ここで、なぜ思い出されることがそんなに効くのかという話をします。
分かりやすい例が不動産です。私は動画の仕事で不動産会社と関わることが多く、この業界の選ばれ方には特徴があります。
家を買いたい人は、まず物件を探します。物件はネット上に並んでいて、条件も価格も比べられる。だから物件で選び、その物件を扱っている会社に問い合わせます。会社は後から付いてくる形です。
ところが、家を売りたい人はどうでしょうか。売りたい家は一つしかありません。比べる材料がない。いくらで売れるのが正解かも分からない。そういうとき、人は何で選ぶか。会社の名前で選びます。
これは不動産に限りません。既製品を買うときは価格と仕様で比べられますが、丸ごと任せる仕事には比べる材料がありません。出来上がる前に品質を確かめられないからです。
だから任せる側は、覚えている名前の中から選びます。正確に言えば、何に詳しい人かが分かっている相手の中から選びます。
そして、そういう相談ほど金額が大きく、長く続く仕事になります。比べられないからこそ、値段の勝負にもなりにくい
同業と同じ出し方をしていると、名前は残りません
ではどう出すか。ここで間違えると、続けても名前が残りません。
以前、不動産会社のYouTubeを片っ端から見たことがあります。ほとんどが同じでした。部屋の中を紹介する動画か、取引の注意点の解説か、手数料を安くするコツか。つまり商品の紹介か、お役立ち情報です。
どれも悪い内容ではありません。ただ、同じ見せ方の人が何百といる中では、後から出た人は埋もれます。そして見た人の記憶に残るのは、役に立った情報だけで、会社の名前ではありません。
そこで私たちは、別の見せ方に振りました。不動産会社が、その街を紹介するという形です。街の紹介というジャンル自体はテレビの街ブラ番組が何十年も残っているように、もともと見たい人が多い。そこに自分の職業を掛けると、「不動産屋だから街に詳しいのか」という裏付けが生まれます。
これが効きました。撮影に行くと、道で声をかけられるようになりました。「この街のことならあの会社」という位置が、少しずつできていきます。
何を売っているかではなく、何に詳しいのか。人が思い出すのは、たいてい後者です
紹介したい人は、渡せるものを探しています
もうひとつ、掛け算が効く場面があります。紹介です。
誰かがあなたを紹介しようとするとき、「いい人がいますよ」だけでは相手は動きません。そして紹介する側も、何と説明すればいいか分からないと、紹介をためらいます。よく知っているつもりでも、人に説明するとなると言葉が出てこないからです。
このとき、あなたの発信が説明の代わりになります。記事を1本送れば、「この人はこういう考えで仕事をしているんだ」が伝わる。それを読んだ人は、困りごとが出たときに思い出します。
つまり発信は、自分のためだけのものではありません。あなたを紹介したい人の手元にある、渡せる材料でもあります。これが無いと、紹介したい気持ちがあっても運べません。
何に詳しく、どんな考えで仕事をしているか。それが伝わる記事が1本あれば足ります
発信を続ける意味についてはなぜ、発信し続ける必要があるのかにも書きました。何を書き、どう続けるかの全体像は経営者の発信 完全ガイドにまとめています。
最後に
顔が広いことは、間違いなく強みです。ただ、会った時点では、まだ何も始まっていません。
これまでに会った人を思い浮かべてみてください。名刺を交換した人、一度きりで終わっている人。その人たちは今、あなたが何をしているか知っているでしょうか。
新しい人に会うことより先に、もう会っている人に忘れられないこと。そこからで十分だと思います。会う数を増やすより、たぶん近道です。
発信、仕組みで続けませんか?
問いに答えるだけで、あなたの経験が記事になり、noteの下書きまで届きます。
まず無料で1本つくるまだ迷う方は、1分の発信タイプ診断からでも。じっくり考えたい方には、無料レポート「なぜ、経営者の発信は続かないのか」(PDF・12ページ)もどうぞ。


