経営者のための発信コラム
「これ、何のために書いてるんだっけ」——書けるようになった人が、次に止まる場所
発信が続かない理由を、多くの方は「書けないから」だと考えています。私もそう思っていました。
でも、書けるようになった方と1ヶ月後に話してみて、少し考えが変わりました。書けるようになると、次の場所で止まりそうになるらしいのです。
1ヶ月で7本。6年続かなかった方の話の、その後
以前、6年間、発信が続かなかった経営者の話を書きました。独立して自然体験のコーチングをされている方で、「発信した方がいいのは、ずっと分かっていました」と言いながら、お金を払い、コンサルもつけて、それでも続かなかった——という方です。
その方とは、月に一度、振り返りの時間を取っています。何本書けたかを数える場ではなく、その方の目的にもう一度立ち返って、それを実践していくための道標を立てる場です。その1回目でした。
結果から書くと、この1ヶ月で7本書かれていました。6年間ゼロだった方が、です。満足度も聞いてみたところ、10点満点で9点、という答えでした。
続いた理由は、たぶんこの3つでした
なぜ続いたのかを本人に聞くと、挙がったのは大げさな話ではありませんでした。
「今週もお願いします」という短い声かけがあるだけで、「自分はこれをやっているんだった」と戻ってこられる
まとまった記事を書く時間を作るのではなく、日々の小さなメモを残しておくだけ。ハードルが低いので生活の中に入り込みやすい
問いが投げられて、考えて、答える。その往復が自然で、考えたことがそのまま出せる
書く力が上がったわけでも、気合いが入ったわけでもありません。始めるまでの摩擦が減っただけです。ここは前回書いたとおりでした。
それでも出てきた「何のために書いてるんだろう」
ただ、話の途中で、こんな趣旨のことを言われました。
記事を書くこと自体が目的になってしまって、「これ、何のために自分は書いてるんだろう」と思う時がある。
これは正直な言葉だと思いました。そして、たぶん多くの方が同じところで止まっています。
続かない原因は「書けない」ことだ、と私たちは思いがちです。だから道具を入れて、書けるようにする。そこまではうまくいきます。でも、書けるようになると、今度は書く理由のほうが薄くなる。手が動くぶん、目的が置いていかれるわけです。
過去に発信をやめた経験がある方も、思い返してみてほしいのですが——止まった日のことを「忙しかったから」と記憶していても、実際はその少し前から「これ、何のためにやってるんだっけ」と感じていたのではないでしょうか。
目的に戻れると、目標も一緒に戻ってくる
その方は、続けてこうも言っていました。目的に立ち返れば、目標も一緒に立ち返れる、と。
この順番が大事だと思っています。多くの場合、私たちは逆をやります。止まりかけたときに「週に何本書く」という目標のほうを先に立て直そうとする。でも、目的が薄いままで本数だけ決めても、その本数がまた義務になるだけです。
ではその方の目的は何かというと、こういうことでした。知らない、ということは、存在しないのと同じ。自分がいる限界集落の暮らしは、届けなければ、知られないまま終わってしまう人が大勢いる——という感覚です。
抽象的に聞こえるかもしれませんが、この一文があるだけで、「何のために書いてるんだっけ」に対する答えは出ます。書く理由は、記事の外側にあるということだと思います。
発信の目的は、たぶん2つに分かれます
私自身は、経営者の発信には目的が2つあると考えています。
あなたが価値を届けられる相手のうち、あなたを知らないまま困っている人がいる。その人に気づいてもらうために書く
周りの人は「あなたがその仕事をしている」ことは知っている。でも、日々そこで何が起きているかは知らないし、知る手段もない
見落とされやすいのは、2つ目のほうだと思います。
紹介は、思い出された人に起きます。誰かが困っている場面に出くわしたとき、「そういえば、あの人がこの前こんなことを書いていたな」と浮かぶかどうか。ここが分かれ目です。名刺交換の時点で止まっている関係と、月に何回か近況が流れてくる関係とでは、思い出される確率がまるで違います。
つまり発信は、新規客を捕まえる装置というより、応援者を増やす装置に近い。少なくとも私は、そちらのほうが実感に合っています。
目的で書いたものは、思わぬところで生きています
もうひとつ、最近あった話を書きます。
1年半ほど前、所属している団体の全国大会で登壇する機会がありました。自分としては、その日で終わった出来事です。ところが先日、まったく別の地域の方から、その時の内容を今も研修の中で使っていると聞きました。1年半前に一度話しただけのものが、自分の知らない場所で、今も再生されている。
同じことが、記事でも起きています。集まりで少しサービスの話をすると、ほとんど面識のない方が記事のほうを読んでくださっていて、「あれを見て、自分のプレゼンを作りました」と言われることがあります。そういう方から連絡が来るときには、もう説明が要らない状態になっています。
これは、うまく書けたから起きたことではありません。目的のほうを書いていたから、共感した人のところに残っただけだと思っています。逆に言えば、目的が薄いまま量だけ増やした記事は、たぶん残りません。
あなたは、何のために書いていますか
まとめます。
発信が止まる場所は、ひとつではありません。最初は「書けない」で止まり、書けるようになると「何のために書くのか」で止まる。前者は道具で解けますが、後者は道具では解けません。
だから、いま発信が続いていない方にも、これから始める方にも、先に一度だけ考えておいてほしいことがあります。
あなたが書かなければ、誰に、何が届かないままになるのか。
これが1行で言えるなら、途中で手が止まっても戻ってこられます。もし今すぐ言葉にならなくても、心配はいらないと思います。私が見ているかぎり、それは書きながら見つかることのほうが多いです。7本書いた方も、書き始めてから自分の目的をもう一度確かめていました。
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