「書いても、何も起きない」——発信の成果が出ない時期の話 経営者のための発信コラム

「書いても、何も起きない」——発信の成果が出ない時期の話

2026-08-18|松井祐太(プロフィール)

「3ヶ月やってみましたが、何も起きませんでした」。

発信を始めた経営者の方から、こう聞くことがあります。記事を書いた。投稿もした。それなりの時間も使った。なのに、問い合わせはゼロ。いいねが数件つくだけ。——これなら他のことに時間を使ったほうがいいんじゃないか、と思えてくる。

その感覚は、自然だと思います。ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあって、発信の成果は、時間に比例して少しずつ出てくるものではありません。長いあいだ横ばいで、ある時期に一段跳ねる。だからやめる判断は、たいてい跳ねる手前で起きます。

この記事では、その「何も起きない時期」をどう過ごすかを書きます。

成果は、なだらかには出てこない

まず、実際のグラフの形を見てほしいと思います。

私の会社で発信を支援している、あるBtoBメーカーさんは、ホームページのブログを月4本、約2年書き続けています。やっていることはそれだけです。検索データを16ヶ月分さかのぼると、表示回数は約166万回、検索から来た人は約4.7万人になっていました(詳しい数字はこちらの記事にまとめています)。

ただ、ここで大事なのは合計の数字ではなく、グラフの形のほうです。最初の数ヶ月はほぼ横ばい。途中から右肩上がりになって、ある時期に一段跳ねて、高い水準で安定する。きれいな右肩上がりの直線には、まったくなっていません。

発信の成果が出る形。横ばいの時期は「何も起きていない時期」ではなく、跳ねるために溜めている時期。
発信の成果が出る形。横ばいの時期は「何も起きていない時期」ではなく、跳ねるために溜めている時期。

なぜこうなるのかというと、書いた記事が消えずに残るからです。1本目は1本分の力しかありませんが、20本目が公開される頃には、過去の19本も一緒に検索に引っかかっている。読む人から見ても、記事が1本しかない会社と、20本ある会社では、信用の重さが違います。積立に近い構造だと思っています。

つまり、横ばいの時期は「何も起きていない時期」ではなくて、跳ねるために必要な量が、まだ溜まりきっていない時期です。ここでやめると、溜めた分がまるごと使われないまま終わってしまう。私はこれが、発信でいちばんもったいない失敗だと思っています。

成果が出ない時期は、無駄な時期ではありません

種をまいて、水をやっている期間です。芽が出ていないことと、何も起きていないことは、違います。

とはいえ、「跳ねるまで待ちましょう」だけでは、待てないと思います。実際、待てずに止まる方には、共通した状態があるように感じています。

待てなくなる人は、たいてい途中で軸を変えている

反応がないと、人は方向を疑い始めます。ブログを書いていた人が、SNSのほうが早いらしいと聞いてSNSに移る。今度は動画が伸びると聞いて、動画を始める。テーマも、集客に効きそうな話題に合わせて少しずつ変えていく。

一つひとつの判断は、間違っていません。ただ、そのたびに積み上げが一度リセットされます。3ヶ月ぶんの蓄積が3回に分かれると、どれも横ばいのまま終わります。跳ねるところまで行かないので、「やっぱり自分には効果がなかった」という結論だけが残ってしまう。

だから最初に決めておきたいのが、自分の軸です。軸というのは、テクニックの話ではなく、自分が大切にしたい価値観のことだと思っています。家族なのか、仲間との絆なのか、お金や数字の面白さなのか、伝えることそのものなのか。自分が好きで、考えていて楽しい場所はどこか。

そこを軸に置くと、発信のテーマが自然に絞られます。そして何より、成果が出ない時期に消耗しにくくなります。反応がなくても、自分がおもしろいと思っている話なら、書き続けられるからです。

逆に、あれもこれもと手を出すと、たいていうまくいきません。これは発信に限らず、事業でも同じかもしれません。

発信が止まる原因は、意志の弱さではなく構造にあります。この点は発信が続かないのは、意志の問題ではないにまとめました。あわせて読んでいただけたらと思います。

では、軸を決めて続けている人の中で、それでも伸びる人と伸びない人がいるのは、何が違うのか。

伸びていく人は、素直で、謙虚で、柔らかい

ここが、私がいちばん大事だと思っているところです。

発信を続けていると、必ず誰かから何か言われます。反応が薄いという事実も、ある種のフィードバックです。そのときに、「いや、自分は自分だから」と閉じてしまうと、そこで止まります。改善のしようがないからです。

伸びていく方を見ていると、まず「なるほど」と受け取ります。そのうえで、相手が言っている世界観の中に一度入って、シミュレーションしてみる。自分の中で試してから、採るか採らないかを決めている。この順番なんだと思います。最初から評価しにいくのではなく、まず入ってみる。

実るほど頭を垂れる稲穂、という言葉があります。どこまで行っても上には上がいて、成長した人ほど頭が低い。あれは謙遜の作法というより、伸び続けるための実務なんじゃないかと感じています。頭が低いほど、情報が入ってくるからです。

そしてもうひとつ、フェーズごとに変わっていける柔らかさ。最初の3ヶ月と、1年経ってからでは、効くやり方が変わります。決めた軸は変えないまま、やり方だけ変えていく。この二つを分けられると、続けながら伸びていけると思います。

1
成果は、なだらかには出ない

横ばいの時期は、跳ねるために溜めている時期

2
軸を決めて、そこから動かさない

媒体やテーマを変えるたび、積み上げはリセットされる

3
素直さ・謙虚さ・柔らかさ

受け取れる人だけが、続けながら直していける

今、反応がない時期にいるなら

もし今、書いても何も起きない時期にいるとしたら、それは向いていないという結論ではなくて、まだ曲線の手前にいるだけかもしれません。

私自身、人の発信は仕事として作れるのに、自分の会社の発信は長いこと止まっていました。だから「やめようかな」と思う気持ちのほうが、よく分かるつもりです。そのうえで言えるのは、続けた会社にだけ、あの跳ね上がりが来ていたという事実です。

まずは、自分の軸をひとつ決めてみてください。そして、成果ではなく「続いているかどうか」だけを、しばらくの物差しにしてみる。数字を見るのは、そのあとでも遅くないと思います。

なぜ続ける必要があるのか、という話はこちらの記事にも書きました。もし今、迷っている時期なら、こちらも読んでみてください。

松井祐太
松井祐太株式会社Four Aces 代表

映像制作会社を経営しながら、AIで経営者の発信を仕組みにする「Tanemi」をつくっています。たとえばサロンを選ぶとき、どんな人がどんな想いで向き合ってくれるかは、ポータルサイトの条件だけでは伝わりませんよね。発信は、その「あなた」を届ける場所です。だから、お客様には「この人にお願いしたい」と選ばれます。採用も同じで、まだ発信していない人が自分の魅力を言葉にできたら——業界やエリアを越えて、その人に本当に合う仲間や従業員との出会いが増えるはずです。発信を通じて、そんな出会いと、幸せになる人を増やしたい。人生が輝くきっかけを、つくり続けたいと思っています。

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