「自分がやらないと質が落ちる」と思っている仕事ほど、渡せる 経営者のための発信コラム

「自分がやらないと質が落ちる」と思っている仕事ほど、渡せる

2026-08-10|松井祐太(プロフィール)

「これは、自分がやらないと質が落ちる」

そう思っている仕事が、いくつかあるのではないでしょうか。お客様との最初のヒアリング。企画の骨組みを決める場面。相手の話を聞いて、言いたいことを言葉にしていく時間。

会社の中でいちばん価値のある部分ほど、社長本人が抱えたままになっている。そして、そこが会社の限界にもなっている——そんな感覚があるとしたら、この記事は役に立つかもしれません。

私もまったく同じでした。その仕事をAIに渡してみたら、価値は減るどころか広がりました。 何をしたから渡せたのかを書きます。

自分が時間をかけないと、提供できなかった

もともと私がやってきたのは、「その人の魅力がいちばん伝わる形を設計する」という仕事です。映像制作でも、撮影や編集の前に必ずこれをやります。

ただ、この仕事には決定的な弱点がありました。私が時間をかけないと、提供できないんです。

一人ひとりと向き合って、話を聞いて、掘って、言葉にする。これは代わりがききません。だから、届けられる人の数には限りがある。がんばって働いても、1日は24時間しかない。ここで詰まっていました。

自分の思考を、AIに渡してみた

そこで考えたのが、自分が頭の中でやっている手順を、そのままAIに渡すことでした。

どんな順番で問いを立てているのか。相手が一般論を答えたとき、次にどう掘るのか。どこで黙って待つのか。自分では無意識にやっていたことを、一つずつ言葉にして、AIに持たせていく。

正直に言うと、始める前は少し怖さもありました。自分の腕を手放すようなものではないか、と。

でも、やってみて分かったのは逆でした。

1
自分がいなくても、価値が届くようになった

時間をかけずに提供できる。届けられる人の数の上限が外れた

2
自分の頭の中が、初めて言葉になった

AIに渡すには、言語化するしかない。その過程で自分の考えが整理された

3
空いた時間で、次を考えられる

作業から離れたぶん、いちばん得意なことに戻れた

ただ作るのではなく、「価値を担保する」

ここが、私がいちばん面白いと感じているところです。

AIで何かを作ること自体は、いまや誰でもできます。文章も画像も動画も、ボタンひとつで出てくる。でもそれは「作れる」だけです。

私がやりたかったのは、そこではありません。これまで人が時間をかけて提供していた価値を、AIに載せても質が落ちないようにすること。作業を置き換えるのではなく、価値を担保したまま渡す。

この違いは大きいと思っています。ただ自動化しただけのものは、たいてい薄くなります。薄くならないようにするには、そもそも何が価値だったのかを、自分で分かっていないといけない。

だから結局、言語化が先なんです。自分の価値を言葉にできて初めて、それをAIに載せられる。ここを飛ばして「とりあえずAIで」とやると、便利だけど中身のないものができあがります。

自分が時間をかけて提供していた価値を、言葉にしてAIに渡す。だから薄くならずに広がる。
自分が時間をかけて提供していた価値を、言葉にしてAIに渡す。だから薄くならずに広がる。

「面白い」で終わらせず、事業にする

ここまで読むと、趣味の話に聞こえるかもしれません。でも、私がいちばん手応えを感じているのは、これがちゃんと事業として成立しているところです。

作ったサービスは、実際にご契約いただいて、使っていただいています。無料で配って喜ばれて終わり、ではありません。お金を払ってでも使いたいと思っていただけている。ここは、はっきり分けて考えたいところです。

AIで何かを作ってみた、という話は世の中にあふれています。でも、作ったものが売れているかどうかは別の話です。そして売れるかどうかを決めるのは、AIの性能ではなく、そこにちゃんと価値があるかでした。

つまり、こういうことだと思っています。

1
作れる、だけでは事業にならない

AIで形にはなる。でも「お金を払う理由」は、AIが作ってくれるわけではない

2
価値が言葉になっていると、伝わる

何を解決するのかが自分で言えるから、相手にも伝わる。だから買ってもらえる

3
続くかどうかは、そこで決まる

一度売れるだけなら偶然。価値が明確だと、使い続けてもらえる

一緒にやりたい、と言ってくれる人が増えた

もうひとつ、思っていなかった変化がありました。一緒にやりたい、と声をかけてくださる方が増えたことです。

自分のサービスを売ってくれる方。別の業界で同じ仕組みを使いたいという方。組んで新しいものを作りませんか、という話も出てきました。

なぜこうなったのか考えてみると、何をやっているのかが、はっきり言葉になっているからだと思います。

「AIで色々やっています」だけだと、相手も組みようがありません。でも「人が時間をかけて提供していた価値を、質を落とさずにAIに載せている」と言い切れると、相手が自分の事業と重ねて考えられる。

だから、言葉にすることは自分のためだけではありませんでした。一緒にやる人を見つけるための手段でもあった、といまは思っています。

向いていた理由が、あとから分かった

ずいぶん前に受けたストレングスファインダーで、私の1位は「着想」でした。バラバラのものを結びつけて、アイデアにするのが得意なタイプです。

当時はピンときていませんでしたが、いまになって腑に落ちました。AIで商品をつくるのは、この資質にとてもよく合っているんです。

やっていることは、要するに「分解して、つなぎ直す」こと。自分の仕事を工程に分けて、どこがAIに渡せて、どこは人が持つべきかを見極めて、組み直す。これは着想が働く場面そのものでした。

そして、自分で手を動かして納得しながら作れるのも大きいです。人に頼んで待つのではなく、思いついたその日に形にできる。この速さが、そのまま面白さになっています。

いちばん大事なのは、ここは自分にしかできないということ

そして、これがいちばん大事な理由です。開発だけは、私にしかできない。

正確に言うと、AIを動かすこと自体は誰でもできます。でも、私がこれまでやってきた「価値の設計」を、そのまま仕組みに落とすという作業は、私の頭の中を知っている人間にしかできません。どんな順番で問いを立てるのか、どこで掘るのか、何を大事にしてきたのか。それは私の中にしかない。

だから、ここに時間を使う判断は、優先順位というより構造の問題です。私が手を止めたら、この部分は誰も進められない。逆に、他の仕事は代わってもらえます。

一方で、販売はどうか。私は考えるのが好きなんです。どう組み立てるか、何をどう置き換えるかを考えている時間がいちばん楽しくて、放っておいてもそこに時間を使ってしまう。

でも販売は、どちらかというと行動する人のほうが向いていると思っています。会って、話して、動く。そのサイクルを回すことに喜びを感じる人がいます。私が同じ時間を使っても、その人ほどの成果は出ません。そして何より、そこは代わってもらえる場所です。

だから、自分の時間を作ることに寄せました。代わりがいないところに自分が立ち、代われるところは組む。そう決めただけの話です。役割が違うだけで、どちらが上ということもありません。組み合わさったときに、いちばん遠くまで届くのだと思います。

まとめ——価値を広げる前に、言葉にする

振り返ってみると、順番はこうでした。

  1. 自分が時間をかけて提供していた価値があった
  2. それを言葉にした(ここがいちばん大変だった)
  3. 言葉になったから、AIに渡せた
  4. 自分が動かなくても、価値が届くようになった
  5. 結果として、事業になり、一緒にやる人も増えた

2番を飛ばすと、この流れは成立しません。 AIを入れても薄いものしか出てこないのは、たいてい「自分の価値が言葉になっていない」からだと思っています。そして言葉になっていないものは、売れませんし、人も組めません。

もうひとつ。この2番だけは、代わりにやってもらえないところでもあります。あなたの頭の中にあるものを言葉にする作業は、あなたにしかできない。逆に言えば、そこさえ越えれば、あとは任せられる部分がぐっと増えます。

だから、AIを活用したい経営者の方にお伝えしたいのは、まず自分がやっていることを言葉にしてみませんか、ということです。それは発信のためだけではなく、自分の仕事を広げるための最初の一歩でもあります。

Tanemiは、まさにこの「自分の価値を言葉にする」ところを担う道具です。問いに答えていくうちに、頭の中にあったものが形になっていきます。まずは無料で1本、試してみてください。

松井祐太
松井祐太株式会社Four Aces 代表

映像制作会社を経営しながら、AIで経営者の発信を仕組みにする「Tanemi」をつくっています。たとえばサロンを選ぶとき、どんな人がどんな想いで向き合ってくれるかは、ポータルサイトの条件だけでは伝わりませんよね。発信は、その「あなた」を届ける場所です。だから、お客様には「この人にお願いしたい」と選ばれます。採用も同じで、まだ発信していない人が自分の魅力を言葉にできたら——業界やエリアを越えて、その人に本当に合う仲間や従業員との出会いが増えるはずです。発信を通じて、そんな出会いと、幸せになる人を増やしたい。人生が輝くきっかけを、つくり続けたいと思っています。

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