情報発信の「ネタがない」経営者へ——足りないのは、ネタではなく問いです 経営者のための発信コラム

情報発信の「ネタがない」経営者へ——足りないのは、ネタではなく問いです

2026-07-20|松井祐太(プロフィール

「発信するようなネタが、うちには無くて」。

経営者の方とお話ししていると、本当によく聞く言葉です。ところが不思議なもので、そう言った方に「じゃあ、なぜその値段にしているんですか?」と聞くと、たいてい30分は止まらずに話してくださるんですよね。

このギャップに、答えが全部あると思っています。ネタが無いのではなく、自分の中にあるものが「ネタに見えていない」だけなんです。この記事では、その見えていないものを掘り起こすための「問い」を、そのまま使える形で書いていきます。

「ネタがない」の正体は、ネタ不足ではない

なぜ、話せば出てくるのに、書こうとすると無くなるのか。

理由は、自分にとっての当たり前は、自分では価値に見えないからです。毎日やっていることは、空気のようなもの。わざわざ言うほどのことじゃない、と本人は思っています。でも、その「わざわざ言うほどでもないこと」こそ、外の人がいちばん知りたい部分だったりします。

私自身にも覚えがあります。動画をつくるとき、私は撮影より前の「誰に何を届けるか」を決める工程にいちばん時間をかけています。ただ、これは自分の中では当然の段取りなので、長いあいだ人に話す価値があるとは思っていませんでした。ところが実際に話してみると、「そこまで考えて撮っているんですね」と驚かれる。自分の当たり前は、外から見れば当たり前ではなかった、と気づいた瞬間でした。

1
毎日やっているから、慣れてしまっている

自分の判断基準は、意識にのぼらないくらい体に染みついています

2
比べる相手がいないから、差が見えない

同業と自分を並べて見る機会は、実はほとんどありません

3
「こんなの誰でも知っている」と思っている

プロほどそう思いますが、たいてい知っているのは同業だけです

つまり、探しに行くべきなのは新しい話題ではなく、すでに自分の中にあって、まだ言葉になっていないものです。では、どうやって掘り起こすか。

掘り起こす道具は、たったひとつ「問い」

私がお客様の言葉を引き出すときに使っているのは、実はとてもシンプルな2つの問いだけです。

ひとつ目は、「それで、お客様はどうなるんですか?」。自分の話が、相手にとっての価値に着地しているかを確かめる問いです。

ふたつ目は、「なぜ、そうしているんですか?」。そして、返ってきた答えにもう一度「なぜ?」を重ねます。ここが肝心で、1回目の答えはたいてい一般論で出てきます。2回、3回と重ねていくと、だんだん自分だけの具体に降りていきます。

「なぜ?」を重ねるほど、一般論はあなただけの具体に降りていく。
「なぜ?」を重ねるほど、一般論はあなただけの具体に降りていく。

図のとおり、最初の「丁寧な接客を心がけています」は、正直どこの会社でも言えることです。誰にも刺さりません。でも3回掘ると、「初回に1時間かけて話を聞く。施術より前に本当の悩みを聞かないと結果が出ないから」という、その人にしか書けない話になります。ここまで降りて、はじめてネタになるんです。

そのまま使える、掘り起こしの問い

自分ひとりで掘るときに使える問いを並べておきます。答えを頭の中で考えるだけでなく、声に出すか、書き出してみてください。

なぜ、その値段にしているのか

値付けには、あなたの価値観がいちばん強く出ます

どんな依頼なら、お断りするか

断る基準は、そのまま「何を大事にしているか」の裏返しです

同業の「普通」で、自分がやらないことは何か

業界の常識との差が、あなたの独自性そのものです

お客様に「そこまでやるんですか」と言われたことは

驚かれた経験は、当たり前が価値に変わった瞬間の記録です

昔の自分に、ひとつだけ教えるなら何か

経験の中でいちばん役に立った学びが出てきます

どの問いも、答えが出たら必ず「なぜ?」をもう一度重ねてください。1回で止めると、また一般論に戻ってしまいます。

出てくるのは「ネタ」ではなく、選ばれる理由

こうして掘り起こしたものは、単なる記事のネタではありません。

自分の中の当たり前は、外に出して、他の人に「それはすごい」と認知されて、はじめて価値になります。逆に言えば、出していない限り、どれだけ良い仕事をしていても無いのと同じに見えてしまう。発信とは、自分の当たり前を、他人が価値だと気づける場所に置きにいく作業なんだと思います。

実際、Tanemiの体験でこの問いを受けた方から、こんな感想をいただいたことがあります。

体に染みついている経験が、言葉になった

「導入の質問にはじまり、回答を深堀り、さらに質問という作業を繰り返すうちに、人間のコンサルタントからコンサルティングされている感覚を覚えた」

キャリアコンサルタント(国家資格保持)/モニター体験より

問いを受けると、自分でも気づいていなかった判断基準が言葉になって出てきます。それを読んだお客様が「この人に頼みたい」と思う。ネタ探しの話のようでいて、実は選ばれる理由をつくる話なんですよね。

まとめ——ネタを探す前に、自分に問いを

情報発信のネタがないと感じたら、新しい話題を探しに行かないでください。足りていないのはネタではなく、自分の中を掘る問いです。

なぜその値段なのか。なぜその依頼は断ったのか。そして、その答えにもう一度「なぜ?」を。3回重ねたころには、あなたにしか書けない具体が出てきているはずです。

なお、日々の中からネタを「拾う」側のやり方は、別の記事にまとめています。この記事が自分の内側を掘る話だとすれば、そちらは外側から拾う話です。あわせて読むと、ネタ切れはほとんど起きなくなると思います。

私がつくった「Tanemi」は、この「問いを重ねて当たり前を掘り起こす」という工程を、そのまま仕組みにしたものです。ひとりで自分に問いを立てるのが難しければ、問いに答えるところから試してみてください。あなたの中には、まだ言葉になっていない価値が、たくさん眠っているはずです。

松井祐太
松井祐太株式会社Four Aces 代表

映像制作会社を経営しながら、AIで経営者の発信を仕組みにする「Tanemi」をつくっています。たとえばサロンを選ぶとき、どんな人がどんな想いで向き合ってくれるかは、ポータルサイトの条件だけでは伝わりませんよね。発信は、その「あなた」を届ける場所です。だから、お客様には「この人にお願いしたい」と選ばれます。採用も同じで、まだ発信していない人が自分の魅力を言葉にできたら——業界やエリアを越えて、その人に本当に合う仲間や従業員との出会いが増えるはずです。発信を通じて、そんな出会いと、幸せになる人を増やしたい。人生が輝くきっかけを、つくり続けたいと思っています。

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